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福岡高等裁判所 昭和22年(上)20号 判決 1947年10月06日

上告人 被告人 吉田貞剛 外一名

辯護人 田中廉吉

檢察官 白土八郎關與

主文

被告人兩名の本件上告は何れも之を棄却する。

理由

被告人貞剛辯護人田中廉吾上告趣意書第二點 我が國の無條件降伏後占領軍の発せる武器回收に係る指令及銃砲等所持禁止令は一般に武器の所有若くは所持を禁止せり而して其の所有者若くは所持者はその所持を禁止せられある結果として其の武器を提出するか若くは廢棄するの義務あるものなり、然るに提出又は廢棄は處分行爲の一なるを以て該命令は武器の所有者若くは處分權ある所持者に對して向けられたるものと謂ふべく從而銃砲等所持禁止令の適用あるは該武器の處分權ある所持者に限定せらるべきものなり、原判決の認定する事實は一件記録に依れば被告人は昭和二十一年九月十四日頃山口登より本件拳銃の一時的保管方を依頼され之を引受同日之が引渡を受け同年十二月三十日迄自宅に之を所持したるものなり被告人に本件拳銃の處分權なかりしことは明かなる處なり然るに原判決は前記事實を基礎として其の所持する拳銃の處分權なき被告人に銃砲等所持禁止令を適用せるは法律の適用を誤るものなりと謂ふのである

然し乍ら銃砲等所持禁止令の適用を辯護人所論の如く銃砲等の所持者若くは之が處分權ある所持者のみに限定すべき文理的根據がないのみでなく本令はポツダム宣言を受諾し以て連合國に無條件降伏した我國戰後の特殊事情に基いて立法せられたものであるから本令第一條但書所定の事由のない限り廣く一般に銃砲等の所持そのものを禁止するにあつてたとへその所持者が所有權その他處分權を有する者であらうとなからうとを問わないと解しなければならぬ若し左様でなく辯護人所論のように解するときは本令制定の目的の大半は没却せられるであらうたゞ本令施行の際現に銃砲等を所持する者で本令施行後も引續き之を所持しようと思ふ者は同令附則第二項同令施行規則第二條に則つて之が所持の許可を申請すればいゝのだし本令施行後も引續き之を所持しようと思わない者は自から供出又は廢棄するか、若し之が所持者が自から供出又は廢棄する權利のないときは之が供出又は廢棄を爲さしむるために左様な權限を有する者に引渡せばいゝであらう斯くすることによつて容易に之が不法所持の状態を解消することが出來る筈であつて敢て斯る處置を執らずに依然引續き之を所持するか或は本令施行後に於て新に之を所持する場合に於てその所持者が本令第一條違反として問擬せらるゝことは本令制定の目的に照らしむしろ當然と云わなければならぬそれ故被告人が本件拳銃及實包の處分權がないとしても原裁判所が被告人ば本令施行後たる昭和二十一年九月十四日頃から同年十二月三十日迄の間自宅で之を何等法定の許容事由なくして所持したものとして被告人の所爲に對し本令第一、二條同令施行規則第一條第一號第二號を適用し有罪の判決をしたのは洵に相當であつて要するに辯護人の所論は自己の独自の見解に基き原判決を彼此非難するもので論旨は理由がない(その他の判決理由は省略する。)

右の次第だから刑事訴訟法第四百四十六條に則つて被告人貞剛の本件上告は之を棄却せねばならぬ

以上の理由に依り主文のように裁判する。

(裁判長判事 筒井義彦 判事 青木亮忠 判事 畠山成坤)

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